プロの実例に学ぶ!不動産を保有するうえで知っておくべき資産税まとめ
- 2020年7月22日公開

私は不動産オーナーの3代目です。親から受け継いだ不動産の資産を守り、維持していくことに日々悩んでいます。
不動産経営を続けていくいえで、理解するのにもっとも時間がかかるのが「税金」です。
私は10年前に不動産の税金のことで悩みを抱えて、もっと不動産の資産税に詳しい税理士はいないかと探していました。
税理士と話をする中で、数字の計算や、法律的な内容がわかりにくく、そもそもどんな枠組みから税金のことを考えていけばよいのか分かりませんでした。
また税理士のアドバイスは役には立つのですが、なぜか自分は納得できないと思うことがあります。
みなさんもそんな経験はありませんでしょうか?
なぜならば多くの税理士が税務に関する一般論としてのアドバイスをしてくださるのですが、自分が知りたいのはそんなことではないからです。
でもご安心ください。ここで3つの税金カテゴリーを最初に知っておくだけで、税金についての理解が一気に進むでしょう。
一般社団法人不動産オーナー経営学院の代表理事、学長。1981年名古屋市生まれ。宅地建物取引士、事業承継マネージャー、マンション管理業務主任者の資格を保有。ニューヨークでの大学院留学、東京で外資系投資銀行のモルガンスタンレーに勤め、プロの不動産投資を学ぶ。現在はビルやマンション、商業店舗、駐車場等の事業用不動産を所有、三代目地主。これまで日本で1万人以上のオーナーと話し、資産家や地主の不動産経営に特化して事例や成功体験を研究。講演実績は、中小機構、日経BP社、全日本不動産協会、全管協ほか。
目次
1.資産税とは
みなさまは、資産税という言葉を聞いたことがありますでしょうか。実は「資産税」という言葉は造語で、資産を所有することでかかる税金全般を指します。
その中でも、「不動産に関わる税金」というイメージがあります。海外では、資産家は代々資産を承継するうえで、資産をどのように保有し、分配するのかという戦略について研究されています。
一方、日本では、資産を海外に逃がす、相続税を安くさせるなどのテクニックやサービスばかりが蔓延し、資産保有での基本的な知識を学ぶのが非常に困難です。
そこで、資産税を理解するうえで知っておくべき不動産に関わる税金の仕組みを解説します。
2.不動産に関わる主な3つの税金
不動産に関わる税金で抑えておくべきことは、次の通りです。
- 利益に対する税金:所得課税(所得税や法人税など)
- 不動産を保有・移転することに対する税金:資産課税(固定資産税、相続税、贈与税)
- 不動産を貸すことに対する税金:消費課税(消費税など)
この3つの税金の仕組みについて詳しく解説します。
2.1.所得課税
1.の「利益に対する税金」の代表例は、所得税や法人税です。
家賃収入等を得る際には、利益に対して税金がかかります。利益が高くなればなるほど課税対象額が上がり、支払う税金も高くなります。この税金を下げるためには、課税対象額を抑える必要があります。例えば接待交際費や事業を営む上でかかる諸経費を「必要経費」とすることです。
2.2.資産課税
2.の「不動産を保有・移転することに対する税金」の代表例は、固定資産税、相続税、贈与税などです。
固定資産税は、土地や建物、設備などのモノを保有することにより毎年税金がかかります。相続税や贈与税は、不動産の所有権を移転する際に一度だけ税金がかかります。この税金を下げるためには、より固定資産税評価の低いものへ資産を組み替えることや、税金の軽減を受けられる対策を行うことです。例えば土地に居住用のアパートやマンションを建てることです。
2.3.消費課税
3.の「不動産を貸すことに対する税金」の代表例は、消費税です。
不動産を人に貸す際に、事業用として貸し付ける場合には税金がかかります(但し住宅の貸付けは、非課税とされます)。
この税金は、
- 取引の目的を明確にする
- 賃貸借契約書の工夫をする
- 取引相手と直接契約すること
で調整することができます。
とはいえ、消費税と聞くと一般的には消費財やサービスに対してかかる税金とイメージされるでしょう。不動産取引でどのような消費税が発生するのか想像し辛い方も多いのではないでしょうか。
たとえば、みなさんがスーパーでお買い物をするとします。お買い物をする際に、商品を売るスーパーは、お客さんに対してサービスを提供しています。一方でお客さんはその商品を消費します。ですからスーパーは売り上げに対して所得課税がかかり、お客さんは消費に対して消費課税が課されるという税金の仕組みです。
不動産も同じように、売買や経営の目的によっては、サービスを提供する側にもなりますし、サービスを消費する側にもなります。
つまり、不動産を貸す側は、その利益に対して所得課税がかかり、借りる側はお部屋を利用することでの消費課税がかかります。
ただし、取引の目的によっては住居用として入居者が払う地代や家賃については、国民生活に関係する社会的基盤のひとつであることから消費税が非課税になると考えられています。
この他にも消費税には
- 課税される取引
- 非課税取引
- 免税取引
- 不課税取引
になるものがあります。消費税についてまた別記事で詳しく解説します。
3.不動産経営にかかる資産税一覧
まずは、不動産の仕事を簡単におさらいしましょう。
不動産を所有し、土地又は建物を人に貸すことで収益を得ることを「賃貸業」といいます。不動産を人に貸す賃貸業では、様々な収入や支出に対して様々な税金がかかりますので、しっかりと理解しておきましょう。
これから、不動産の賃貸業でかかる資産税を一覧で紹介していきます。
3.1.売上に関わる税金一覧
不動産の賃貸業を行う上で、売上に関わる主な税金です。
- 賃料(住居)《非課税》
- 賃料(事務所)《消費課税》
- 共益費《消費課税》※但し居住用の場合は非課税あり
- 駐車場《消費課税》※但し居住用の賃料に含む場合は非課税あり
- 自販機収入等《消費課税》
- 修繕積立金収入《非課税》 ※課税される場合あり
- 敷金・保証金《非課税》※償却がある場合は一時収入として課税
- 地代《非課税》
住宅の場合は賃料や地代に対して非課税となります。
また修繕積立金などの預かり金としての性質がある収入には非課税です。
敷金や保証金は、たとえば保証金を返還する際に保証金の30%を償却する等を契約条件とする場合は一時収入となり課税されます。
3.2.費用に関わる税金一覧
不動産の賃貸業を行う上で、費用に関わる主な税金です。
- 建物管理費《消費課税》(支払う場合)
- 水道光熱費《消費課税》(支払う場合)
- 仲介費《消費課税》(支払う場合)
- 保険料《非課税》
- 修繕費《消費課税》(支払う場合)
- 固定資産税《資産課税》
保険料を支払う際は課税対象となりませんし、保険料を受け取る際も課税対象にはなりません。
3.3.利益に関わる税金一覧
不動産の賃貸業を行う上で、利益に関わる主な税金です。
- 営業利益《所得課税》(利益が出た場合)
- 市町村民税《資産課税》
- 売却利益《所得課税》(利益が出た場合)
3.4.移転に関わる税金一覧
不動産の賃貸業を行う上で、売買や移転に関わる主な税金です。
- 土地売買《資産課税》(消費税は非課税)
- 建物売買《資産課税、消費課税》
- 不動産登記《資産課税》
- 相続・譲渡《資産課税》
土地は使っても減りはしないので消費の対象ではありませんが、建物は消費税の課税対象となります。
また、個人がマイホームを売却(譲渡)する際も「事業」ではないため消費税は課税されません。
ただし、業者や個人が事業として中古住宅を売却(譲渡)する際は消費税の対象となります。
3.5.その他不動産に関わる税金一覧
- 住宅ローン返済利息、保証金《非課税》(必要経費となる)
- 住宅ローン元金返済《非課税》
- 住宅ローンの事務手数料《消費課税》
- 仲介手数料《消費課税》
まとめ:資産税を減らすためには?
このように、不動産には様々な種類の税金があり、不動産の税務のすべてに詳しい税理士は少ないのが実状です。
たとえば相続税専門の税理士や、法人化等の会社設立に強い税理士はよく聞きますよね。それは1や3に強い税理士と言えますが、その税理士が、この3つ全てを同時に考えた上で、最良の節税をすることに長けているかどうかは分かりません。
私が出会った数少ない不動産の税務全般に強い税理士は、圧倒的な知識と経験を持っています。その結果、事業運営と資産承継のバランスを考慮して最良の選択をすることが資産税を減らすことに繋がります。
資産税を減らすためには、相続税の支払いだけを減らせばよいというものではありません。
将来の経営を見越した上で、不動産の在り方から総合的に税金を考えるバランス感覚が重要といえます。私の会社ではホールディングス化をして、ホールディングス税制の適用を受けています。このような第三の資産税対策について知りたい方はぜひお問合せください。
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