土地活用の始め方|不動産投資のプロが初心者にもわかりやすく解説
- 2020年7月24日公開

これまでに10,000人以上の不動産オーナーとお話してきました。
その経験のなかで、みなさんから最初に「不動産に興味があるのだけど、どんなことから学べばよいのですか?」と質問されます。
実は上場会社の社長や、有名人からも、こんな初歩的な相談をされます。
私がいつも分かりやすくお伝えしていることは、
- 不動産を買えば儲かるものではない
- 不動産は不労所得ではない
- 借金をして不動産を買うだけではない
私が不動産を増やしている理由は、本業であり、事業として経営をしているからです。ですから、不動産を買うことがゴールではなく、所有して経営する継続事業と考えています。
つまるところ、不動産業は投資でもなければ、資産でもなく、土地と建物の運用から始まる仕事ということです。
そこで、その土地や建物を、「誰に」、「どのような用途」で、「何年」貸すのかを決めることが「土地活用」です。その条件が最適であれば利益は当然出ます。ですから不動産を買う場合においても、利回りの高い、お買い得品を買うのではなく、そもそもどんな不動産を買うのか?を決めることが大切なのです。
これから不動産投資や土地活用を考えている人にお伝えしたいことは、不動産の物件探しから始めたり、業者を探したりするまえに、ここだけは知っておいて欲しいということを纏めました。
一般社団法人不動産オーナー経営学院の代表理事、学長。1981年名古屋市生まれ。宅地建物取引士、事業承継マネージャー、マンション管理業務主任者の資格を保有。ニューヨークでの大学院留学、東京で外資系投資銀行のモルガンスタンレーに勤め、プロの不動産投資を学ぶ。現在はビルやマンション、商業店舗、駐車場等の事業用不動産を所有、三代目地主。これまで日本で1万人以上のオーナーと話し、資産家や地主の不動産経営に特化して事例や成功体験を研究。講演実績は、中小機構、日経BP社、全日本不動産協会、全管協ほか。
目次
1.土地を調べる
まず土地です。
結論からいいますと、土地を持てば明日から収入が生まれることはありません。
土地が広いから価値があると思っても、現状は草が生えっぱなしであったり、古い建物が建っていたり、山や崖になっていたりなど状況が様々です。
ですから、土地を「整地すること」からはじめましょう。
とはいえ、土地を整地するためには「お金」がかかります。
たとえば、空き地(遊休地)であれば次の土地活用はすぐにできますが、変形地であったり、狭小地であると、活用方法が限られてしまいます。
また、すでに建物が建っていたり、駐車場として利用されている土地であれば、建物を壊したり、運用を一度止めなければならないので時間がかかります。
そこで、土地を調査する上でこのような順番で調べていくとよいでしょう。
1.1.広さ
1m×1m=1㎡(へいべい)といいます。まずは土地がどのくらい広さがあるのかを正確に理解しましょう。
調べる上で参考となる資料は、次の通りです。
- 土地登記簿謄本
- 固定資産税評価証明書
1.2.形状(形、高低差)
土地は、ひとつひとつ形状が異なります。
高低差があったり、変形地であったりもします。
謄本を調べたうえでは、「土地の面積が広くていいな!」と思っても、実際に見に行くと、崖地のために建物が建たないこともあるのです。ですから土地の形状を自分の目でみておくことが大切なのです。
たとえば、収益が高くても、狭小地や、間口の狭い物件などは、後々の売買の際に売れなくなることもあるので注意しましょう。
調べる上で参考となる資料は、次の通りです。
- 公図
- 確定測量図
- 地積測量図や古地図(法務局)
1.3.向き(日当たり)
土地は、周辺環境によって日当たりが異なります。
目の前に大きな建物が建っていると、住居に最適な南向きの部屋を作ろうと思っていても、実際には日が当たらない部屋になってしまうことがあります。
ですから住居の場合は日当たりを確認しましょう。
日当たりが悪い場合は、商業用や工業用へと、対象を変えた方がよいでしょう。
調べる上で参考となる資料は、次の通りです。
- Google MAP
- 現地調査
1.4.間口(道路の幅、接道状況、見え方)
間口(まぐち)とは、道路に接している長さを指します。
土地は、実は、間口によって価値が変わります。
たとえば商業地の場合には、遠くからでも見やすい、見通しのよい土地であれば価値が高くなります。実際に、郊外のロードサイドでよく見られるようなドラッグストアやドライブスルーを想像するとわかりやすいですね。
プロ向けに、これは不動産鑑定をする際の基準となる間口の長さです。
⇒土地の形状別の攻略方法については、『30種類の土地活用の比較と事例を初心者にもわかりやすく解説』を参照してください。
調べる上で参考となる資料は、次の通りです。
- 確定測量図
- 地積測量図(法務局)
- 現地調査
2.建物を調べる
次に建物です。
建物はアパートやマンションだけでなく、駐車場、店舗、事務所と、多種多様な用途の建物があります。
結論からいいますと、建物を持つと管理費用や維持修繕費用がかかります。そして、規模に応じて固定資産税や相続税がかかります。
※アパートやマンションを建てれば単純に相続税が安くなることはありません。なぜならば土地に加えて建物も相続資産の対象となるために、合算すると税金が上がるからです。ただし、自宅などの用途にすることで相続税評価に対して一定の控除や特例があります。 |
ですから、土地と同様に、建物も「どんな用途にするか」を考えていきましょう。
とはいえ、建物を建てると「お金」がかかります。
たとえば、アパートやマンションであれば住居用(人が対象)です。
また、ビルや店舗であれば商業用(事業が対象)です。
駐車場や倉庫であれば、工業用(機械や工作物等が対象)です。
このように、建物を誰に対して、どのような用途で、いくらの賃料で、どのくらいの期間を貸すかによって土地活用による収益率が異なります。
そこで、建物を調査する上でこのような順番で調べていくとよいでしょう。
2.1.規模
規模とは、建物の大きさのことです。
建物の規模を表す指標として、延べ床面積があります。
延べ床面積とは、建物の各階の床面積を合わせた規模を表します。
規模が大きければ、その分だけ管理や修繕にかかる費用が上がります。
また、規模に応じて建物資産にかかる税金も上がります。
調べる上で参考となる資料は、以下の通りです。
- 建物登記簿謄本
- 固定資産税評価証明書
- 建物竣工図
2.2.主要構造
構造とは、どんな構造で建物が建っているかということです。
たとえば、このような建物の構造があげられます。
- 木造
- 鉄骨造
- コンクリート造
- 鉄骨鉄筋コンクリート造
- 重量鉄骨造
これらの構造は下にいけばいくほど建てる際にお金がかかります。
調べる上で参考となる資料は、以下の通りです。
- 竣工図
- 現地調査
2.3.設備
設備とは、建物を使う上で必要となる設備や構築物を指します。
- 電気、ガス、水道
- 給排水、空調
- 防災、エレベーター、その他
調べる上で参考となる資料は、以下の通りです。
- 竣工図(設備図面)
- 現地調査
3.不動産投資や土地活用で儲けるためには
ここで私の紹介をさせていただきます。私はマンションやビルの経営をしてきた1人です。また銀行員時代はプロとして全国で100物件以上の土地や建物を運用管理をしてきました。
このような成功や失敗を自分で体感したからこそ分かる「不動産経営の本音」があります。
それは、土地活用を行い、不動産運用をすることです。
しかしながら、簡単ではありません。
不動産があれば「毎年必ず」、「永久に続く」、「決まった賃料が入る」・・なんて投資はありません。
たとえば、土地や建物をどのように運用していくのかを考えるなかで、実際には建物を新たに建てたり、入居者を募集したり、テナントを誘致したり、難しいことがたくさんあります。
だからこそもう一度お伝えしたいことは、
不動産は投資でもなければ、資産でもなく、「土地」と「建物」の運用から始まるということです。
また、プロの皆さんの中でも、よく勘違いことの1つですが、固定資産税評価額が売買価格であると評価することは危険です。
なぜならば、国が算出する土地評価基準は税金を計算するためのものであり、土地に残置物や古い建物が残ったままであれば、当然そこから差し引かなければなりません。その状況次第では極端な話ですが不動産の取引価格が1円になることもあるのです。
まとめ
土地があり、そのうえに建物がある。
土地や建物を人に貸すことで家賃を得ることを「賃貸業」といいます。
そこで、その土地や建物を、誰に、どのような用途で貸すのかを考えることが「土地活用」です。
その出口が見えたとき、不動産事業として継続していくだけの収益を確保することができます。
- 不動産を買えば儲かるものではない⇒買う前に運用方法を調査する。
- 不動産は不労所得ではない⇒賃貸業を行う。
- 借金をして不動産を買うだけではない⇒お金の調達方法は様々です。
この3つを抑えた上で、さらに興味がある方は不動産の利回りや投資方法について、『30種類の土地活用の比較と事例を初心者にもわかりやすく解説』の記事もご覧いただければと思います。
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