コインパーキングに必要な初期投資と期待できる利回りの実例解説
- 2020年7月3日公開

私は今、収入の一部をコインパーキング(時間貸し駐車場)から得ています。14台の駐車場で、月額平均は45万円ほどの定期収入になっています。
さらに近隣の店舗へ駐車場のサービス券を販売したりすることで、収入が多い月は50万円ほどになります。
このようにコインパーキングが稼働すれば投資対効果は思った以上に高くなりますが、最初に駐車場経営をはじめたときは、もちろん苦労しました。
その理由としては、月極駐車場は毎月必ず収入が定額で入ってきますが、コインパーキングは認知度が広がるまでは収入が低いからです。このように駐車場をコインパーキングにする際にはしっかりとマーケティング調査を行い、予算に余裕をもって始めるとよいでしょう。
そこで、ここでは、コインパーキングに必要な初期投資と、その利回りについて解説していきます。
なお、実際に月極駐車場をコインパーキングにする上でのマーケティング調査、そして、そこから投資利回り(売上)を改善する方法については『私が経営している駐車場の投資利回りと売上2倍以上にした方法』で解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
一般社団法人不動産オーナー経営学院の代表理事、学長。1981年名古屋市生まれ。宅地建物取引士、事業承継マネージャー、マンション管理業務主任者の資格を保有。ニューヨークでの大学院留学、東京で外資系投資銀行のモルガンスタンレーに勤め、プロの不動産投資を学ぶ。現在はビルやマンション、商業店舗、駐車場等の事業用不動産を所有、三代目地主。これまで日本で1万人以上のオーナーと話し、資産家や地主の不動産経営に特化して事例や成功体験を研究。講演実績は、中小機構、日経BP社、全日本不動産協会、全管協ほか。
目次
はじめに:私が経営しているコインパーキング
最初に、駐車場収入の実績をお伝えします。私が経営する駐車場は、一つの駐車場の中に9台のコインパーキングスペースと、5台の月極めスペースがあるというものです。下の画像が実際のものです。
この駐車場の売り上げの推移は、次の通りです。
- 2014年:2,344,600円(月平均19.5万円)
- 2015年:3,006,900円(月平均25万円)
- 2016年:2,800,000円(月平均23万円)
- 2017年:3,779,200円(月平均31.5万円)
- 2018年:1,177,600円(月平均37万円)《3月まで》
これに加えて、月極駐車場5台で10万円/月と、駐車券3万円/月の売上もあります。
1.初期投資は9台で予算400~450万円
結論から言うと、この駐車場に対する初期投資の額は400~450万円でした。
その内訳に関して詳しい話をする前に、駐車場会社と交渉する際には、
①すべてオーナー負担
②一部オーナー負担
③すべて駐車場会社負担(借上げ)
の中から運営形式を決めます。それぞれの違いは『駐車場経営って儲かるの!?基礎知識と儲けのノウハウまとめ』でご覧頂ければと思います。
なぜ最初にこの話をしたかといいますと、一般的に駐車場会社からは②の提案が多いのですが、その中には、一部オーナー負担と提案してきながら、不当に多くの初期費用の負担を求める駐車場会社がいるからです。
私の場合は、9台で400万円の予算がかかりましたが、初期投資の費用は結局、駐車場会社との交渉で大きく変わります。そのため、言いなりになるのではなく、お互いに意見を出し合って、本当にそれに投資をする必要があるかどうかを、しっかりと見極めていきましょう。
2.コインパーキングに必要な初期投資とは?
ではコインパーキングの投資をする上で、どのような初期投資がかかったのかを紹介します。初期投資は大きく分けて3つあります。
- 土地整備費用(舗装、車ライン引き、車止めブロックなど)
- 看板費用(料金案内板、看板照明、満室表示機など)
- 設備費用(監視カメラ、料金精算機、フラップ板など)
これらの費用をオーナー負担とするか、駐車場会社の負担とするかを、駐車場会社との間で交渉によって決めて行きます。その際に、特に大きいのは「土地整備をどこまで行うのか?」ということです。
ここからは、私が、様々な駐車場会社と実際に交渉をした経験から、それぞれの決断を行った経緯をご説明します。
2.1.土地整備費用
まず、私が土地整備費に投資した初期費用の内訳は次の通りです。
費目 | 費用 | 備考 |
舗装 | 135万円 | アスファルト舗装 |
ライン引き | 4.5万円 | 5,000円/台 × 9カ所 |
車止めブロック | 10.5万円 | 6,000円/1個(1箇所2つ) |
フェンス | 設置済み | オーナー負担 |
合計 | 150万円 |


アスファルト舗装を行い、ライン引いたうえで車止めブロックを置いていく様子
舗装には、
- 未舗装のまま
- アスファルト舗装
- コンクリート舗装
という選択肢があります。駐車場会社からは、「アスファルト舗装まではオーナー負担というのが通例」という話をされると思います。
舗装をするかどうかの判断基準ですが、月極駐車場であれば未舗装のままでも構いません。しかし、コインパーキングなどサービス力が問われる駐車場については舗装を行う方がよいでしょう。アスファルト舗装とコンクリート舗装の違いは、耐用年数です。前者は10年、後者は20年が目安です。
結論から言うと、まず始めてみようと思っている人は「アスファルト舗装」がおすすめです。
2.2.看板費用
私が初期投資として費やした看板費用の内訳は次の通りです。
費目 | 費用 | 備考 |
料金案内板と誘導看板 | 50万円 | 3ヶ所 |
約定看板代 | 5万円 | 1ヶ所 |
満室表示器 | 20万円 | 1ヶ所+電気工事 |
看板照明 | 25万円 | 3個×2ヶ所+電気工事 |
合計 | 約100万円 |

料金案内板と誘導看板を設置している様子

目立つ位置に満室表示機を設置した様子

料金案内板に看板照明を2カ所設置した様子
看板は、
- 料金案内板
- 誘導看板
- 満室表示機
をどこに設置するかによって、大きさや必要な数、そしてもちろん料金が異なります。
駐車場会社としてはできる限り目立つ場所に大きな看板を設置したいと思う一方(つまり費用を出して欲しい)、オーナーとしてはどこまでお金をかければよいのか分からないのが本音です。
そこで、駐車場会社に借上げてもらう場合は、看板は駐車場会社に負担してもらうことをおすすめします。
私は、その方が利益を高められると判断して、オーナー負担する共同運営を選択しました。自主運営や共同運営をする場合は、看板の大きさや数によってコインパーキングの売上が大きく異なる場合がありますので、しっかりとマーケティング調査を行っていく必要があるでしょう。
2.3.設備費用
私が設備費用に対して行った初期投資は次の通りです。
費目 | 費用 | 備考 |
監視カメラと照明 | 10万円 | 2台 + 設置工事 |
場内照明 | 15万円 | 3ヶ所 + 電気工事 |
料金精算機 | 65万円 | 1台 |
精算用雨よけテント | 屋内にあるためなし | オーナー負担 |
フラップ板 | 120万円 | 1つ13万円 × 9台 |
合計 | 約200万円 |

監視カメラと照明およびフラップ板と料金精算機
設備については、
- 監視カメラ
- 照明
- フラップ板
- 料金精算機
といった機器を購入して設置工事を行います。
駐車場の設備機器は、どこでも自由に買うことができるものではありませんし、金額によって性能も異なります。なので、駐車場会社によって初期費用が大きく異なることがあります。しっかりと計算した上で、駐車場会社との交渉を進めていかなければ、たとえ駐車場会社が借上げ賃料を高く設定してくれたとしても、初期費用も相対的に高くなり、なかなか投資したお金の回収が進まないということもありえます。
ここでは駐車場を運営するうえで一番気を付けていきたいところですし、経験も重要になってきます。
3.コインパーキングの投資利回り
投資利回りには考え方がいくつかありますが、一般的に、投資利回りとは、投資したお金に対して年間で何%が返ってくるか、です。ここではコインパーキングに費やした初期投資額に対して、何年で投資回収ができたかという投資利回りで計算しましょう。
結論から言うと、私がコインパーキングに投資した初期費用を回収するまでにかかった期間は、3年6ヶ月ほどです。
3.1.売上を計算する
上述の駐車場の最初3年間のコインパーキング部分の売上は815万円でした。最初の3年間はなかなか稼働率が上がらずに苦労していた時期です。それでも月極駐車場のままで運営するよりも多少の上乗せ収入がありました。
3.2.費用を計算する
3年間の費用は合計360万円でした。
私の場合は駐車場会社と共同運営でしたので、400万円の設備投資費用に対して機器のリース料を3年で設定した結果、月々11万円の返済でした。
そのほかの費用は以下の通りです。
- 清掃費用:1万円
- 保守料金:3万円
- 保険:0.1万円
- 電気代:0.2万円
- 固都税:4万円
- 諸経費:1.7万円
- 合計の運営費用10万円/月
3.3.利益を計算する
3年間の利益:売上624万円 – 費用360万円 = 455万円
これは1年間当たりの利益に換算すると、平均150万円ですから、
平均年間利益率:150万円/400万円 = 38%
つまり実質利回りは38%でした。実際、初期投資金額400万円に対して、売上から費用を引いた利益では2年6カ月ほどで投資回収が終わりました。
2018年直近では、コインパーキングの売上が月40万円を超えることが多くなり、諸経費を引いても月30万円が残るようになってきました。年間利益が400万円越えも間近です。最初から、この数字を出せていたら、実質利回りは100%を超えていたはずですが、最初から、簡単に理想的な数字にはできないものです。トライアンドエラーの繰り返しが重要です。
なお、コインパーキングの売上を改善するために行ったことは『私が経営している駐車場の投資利回りと売上2倍以上にした方法』で解説していますので、ぜひご覧ください。
4.最後に
コインパーキングを行う上で、どれだけの初期投資をすればよいのかを計るのは難しいと思う方もきっといらっしゃるでしょう。
ここまで初期投資をする上でお金がかかることは説明しましたが、大切なことはこの順序を守って考えていくことです。
- 収入予測はいくらか?
- 初期投資はいくらか?
- 売上から費用を引いた利益はいくらか?
その際、私が設備投資の効率を計るために用いているのが「利回り」です。
利回りを見る上ではここに注意してください。
「1年間の利益÷投資総額=実質利回り」
私は利益をしっかり残していくために、費用をしっかり見ます。つまり、どんなものに投資したらいくらの費用がかかり、手残りはいくらであるかをしっかり計画します。
これで駐車場会社に任せっぱなしの経営と、しっかりオーナーが調べて経営を行うのとでは明確に収入の違いが出ることは分かって頂けたかと思います。
あくまでこの地域の、この場所での収入という事例ではありましたが、他の地域でもたくさんの実績があります。ぜひ参考にして頂けましたら幸いです。
関連記事
-
駐車場経営をはじめるうえでどのような経費がかかるのだろうか? 工事に必要な金額や運営をするうえで必要となる費用の相場を知るために、「初期費用」や「経費」について調べている方は多いと思います。 駐車場会社はたくさんありますし、一括見積のホームペー
-
みなさんが所有している土地を、駐車場として人に貸すうえで、考えるべきことはいくつかあります。 その一つが、駐車場の運営形態に合わせた設備の選択です。 そこで、今回は駐車場における設備の選択肢について、わかりやすくメリットやデメリットを解説してい
-
駐車場経営は、持て余している遊休資産や、使っていない持ち家があるならば、ぜひ一度は真剣に検討して頂きたい土地活用の一つです。 とはいえ、駐車場経営は一つの事業です。 そして、どのような事業も、勉強や経験なしでは成功し続けることはできませんよね。
-
駐車場事業を開業するときに必要な初期費用はいくらなのでしょうか? ここでは、駐車場事業をはじめるうえでの初期費用とその項目や目安を紹介します。 そして私が実際に経営している「コインパーキング9台で初期費用400万円かかった例」を参考に、駐車場を
-
駐車場経営をしているオーナーは「一台あたり平均でどのくらいの収入」を得ているのか? 月極駐車場と時間貸し駐車場の収入を比較調査しました。 実は、駐車場の賃料相場はありそうで「ない」というのが現実です。 なぜならば駐車場料金は、駅前だから高
-
駐車場の投資利回りを上げたい、さらに2つ、3つと駐車場経営を増やしていきたい。 今回は、駐車場投資で月収入40万円以上にさせた事例を基に、稼動率の向上と、収入強化をするうえでのポイントをまとめました。 ここでは、月極駐車場からコインパーキングに
-
実例に学ぶ!駐車場経営でかかる税金の種類と消費税の課税対象まとめ
駐車場として月極め駐車場、コインパーキング、あるいは自宅の空いた場所を駐車場として貸すうえで、どんな税金を払うのか?税金がかかるとしても、いくら税金がかかるのか? このように実際に駐車場経営をするうえで、学んでおきたい方もいるのではないでしょうか。抑
-
駐車場経営を土地購入から始める時の土地の探し方や購入の注意点
なかには、土地を購入するところから駐車場経営を始めたいと考えている方もいらっしゃると思います。 結論から言うと、土地購入から始めても、そこからしっかりと利益をあげられるケースは存在します。 しかし、当然、経験が必要ですし、リスクも小さくありませ
-
駐車場経営のメリット・デメリットと押さえておくべき知識まとめ
私は、現在3つの駐車場を経営しているオーナーです。その経験を基に、駐車場経営のメリット・デメリットや、駐車場会社の選び方、初期投資・運営の仕組みについての押さえておくべき知識を説明します。 私の経験から言えることは、駐車場経営は、たとえば駅から近けれ
-
立体駐車場に投資してみた。自走式駐車場と機械式駐車場の特徴と種類まとめ
みなさんは、自走式駐車場とはどんな駐車場であるのかを知っていますか? その文字のとおり、自分で車を走行させて、駐車区画に停める形式の駐車場のことです。 自走式駐車場には店舗などが隣接する1階のみの「平面駐車場」と、店舗の地下階や2階・屋上などを