【失敗から学ぶ①】アパートの土地活用で失敗した2つの事例とポイント~一括見積もりの罠、サブリース~

今、日本では空前の賃貸アパートやマンションの建築ブームです。

一方で、多くのオーナーが悪い業者に騙されたり、建築トラブルで泣き寝入りしている現状があります。

そこで、「土地活用で失敗した」というたくさんの声を通して、アパートの土地活用で成功するために最低限抑えておくべき知識をまとめました。

はじめに:私の体験「なぜ建築での失敗を伝えたいのか?」

「いよいよ賃貸アパートを建てる!」
「夢の賃貸オーナー生活がはじまる!」

とはいえ、はじめての新築アパートづくりということもあり、「建物を建てること」に不安を抱えている人も多いはずです。

実は筆者の私も、新築アパートづくりを経験した一人です。

私は不動産オーナー学校を通じて何万人というオーナーとお会いしてオーナーの失敗談を聞くなかで、知っておけば成功する秘訣はたくさんあることが分かりました。

しかし残念ながら、失敗したり、トラブルを抱えた後に相談に来られる方が圧倒的に多いのです。

この写真は、新築アパートの竣工前なのにすでに水漏れしている本当の写真です・・。

実際に新築アパートを建てた経験を持つオーナーの声から分かる通り、

  • 業者はほんとうに大丈夫なのか?
  • 建築ミスが起こったらどうしよう?
  • 相見積もりって何を比較するの?

といったように、様々な不安がつきものです。

これは実際にアパートを建てた当事者でなければ分からないかもしれませんが、今も目の前で起こっているのです!

失敗から学ぶケース①
大阪に住むA氏(40歳)妻と3人の子供を持つ脱サラリーマンの方

不動産投資を学んで10年。念願の脱サラをして2018年に土地を取得。これからはじめての新築アパートを建てるということでコンサルタントから紹介された施工会社に建築を依頼。憧れであったアパートオーナーとなるために、銀行からお金を借りて建築がスタートしました。

当初は、建築の契約を進めていく過程で、アパート業者から一方的に説明を受けて、契約書への捺印や、誓約書に同意をしていく日々でした。「これが当たり前なんだ」としか思わなかったとA氏は言います。

契約締結から数か月後、想定外のトラブルや補修工事で数千万円が追加で必要となりました。

交渉のなかで、『追加工事の代金を払わなければすべての工事を止める』と工事会社から言われました。その結果、泣く泣くお金を支払わざるを得ない状況なのです。(次号に続く)

このケースでは、オーナーは不動産投資の勉強はたくさんしてきたものの、建築に関しては知識不足でした。業者の言われるとおり契約書への捺印をし、現在は法的にも立場が弱い状況です。

その後に弁護士へ相談をしましたが、オーナーは「事業主」ですから、法律で守られることにも限りがあり、業者に対してすぐに契約解除や損害賠償をすることもできません。

この問題やトラブルの背景には、業者だけでなく、オーナーも学ぶべき点がたくさんあります。

そこで、私が皆さんにまずお伝えしたいのが、「絶対に抑えておきたい建築までの流れ」です。まずはアパートやマンションの「建築までの流れ」を一緒に理解していきましょう。

【失敗から学んだ!1部】:建築前に気を付けておくこと

まずはじめに、建築をする前に気をつけておくべきことをご紹介します。

建築をするときには、

  1. アパート会社(企画、営業、メーカー)
  2. 工事会社(設計会社、施工会社)
  3. 金融機関

という3者が登場します。

そこで、彼らと対等に話を進める上で、オーナーの失敗の声を合わせて、注意すべき点をご紹介します。

①利回りがよい

みなさんは「利回り(りまわり)」と聞いてどんな基準があると思いますか?

不動産の投資をするうえでは、「利回り」という収益をはかる指標があります。

たとえば、「毎年の家賃に対して、何年で投資回収できるか?」というのが基準です。

とはいえ、実は「利回り」にはいくつか種類があるのを知っていますか?

利回りの種類
建築利回り 毎年の収益に対して、建物代金が何年で返済できるかの指標
表面利回り 毎年の賃料売上(経費を除く)に対して、投資したお金が何年で返済できるかの指標
ネット利回り 毎年の不動産収益に対して、投資したお金が何年で返済できるかの指標

私が実際に見た見積もりの中には、

  • 賃料が30年間下がらない想定をしている
  • 利回りが8%となるように誤魔化されている
  • 修繕積立や経費が少なく見積もられている

といった「アパート建築会社独自の利回り基準」を使うのが実態なのです。

※クリックすると拡大します

実際にアパート経営がスタートすると、空室が発生したり、入退去時の費用が大きくかかったりして「全く想定した利回りにはならなかった」という意見が、多くのオーナーの回答です。

でもはじめて新築を作る人には何もわからないので、「シミュレーション通りにいくものだ」と信じてしまいがちです。なお、アパートのシミュレーション徹底攻略については、『【失敗から学ぶ②】アパートの土地活用で失敗したオーナーの声と8つのポイント~1億2600万円のアパート建築とサブリース~』で解説します。

ですから、計算するうえでは、シミュレーションの徹底攻略をしてください。

②工事会社の契約書が薄い

工事会社からもらった契約書がペラペラの状態!

「おかしいなと思っていたのだけど、やっぱりトラブルになってしまった」というオーナーの失敗談がとても多いのです。

そこで建築をするうえで確認をしておくべき契約書について説明をします。

まずは、この2つの契約書はもらいましたか?

(1)設計監理委託契約書(設計会社と契約)
→設計図をつくり、設計図通りに建物が作られたか?

(2)建築工事請負契約書(施工会社と契約)
→見積書通りの金額で工事が行われたか?
→実施設計図と実施見積書の2つを添付

この契約書を確認しておかないと、後でトラブルとなることが多いです。

さらに、この契約書がないままアパートが建ち、何十年と経った時に瑕疵担保責任の請求ができない、契約内容に問題がある、紛失している等が多い事例です。

この契約書と契約内容を端的に説明しますと、

(1)設計監理委託契約書とは?
一級建築士が建物を設計して、その設計図の通りに工事ができているのかを確認することを、監理(かんり)といいます。施工会社との請負契約がしっかりと行われているかをチェックする大切な契約です。
(2)工事請負契約書とは?
工事会社である請負人(受託者)が建設工事を完成させること約束し、建築注文者(委託者)が、その建設工事の施工の対価として、報酬を支払うことを約束する契約です。建設工事は建設業法第2条第1項・別表第一に規定する29種類の建設工事は、この契約書がなければ業法違反で捕まります。

ですから、この2つの契約書があるかどうか?この内容が守られるかどうか?を施工会社にしっかりと確認しましょう。

③見積もりに「一式」が多い

見積もりに「一式」と書かれた項目を見たことはありませんか?

このように数量が分からない「一式」だけの表記の見積もりは注意してください。

必ず、どの工事でどのくらいの費用がかかっているのかが詳細に書かれている実施見積を確認してください。※特に信用を謡って詳細の費用を隠す工事業者がまだまだいます

④設計会社と施工会社が一緒

アパート業者が紹介する、設計士と施工会社が同一の工事会社の場合は十分注意をしましょう。

昔からよく言われていることのひとつに、「談合」があります。

建設工事の談合では、営業マン、設計士、施工会社が一緒になって裏で会議をおこない、施主であるオーナーが見ていないところで手抜き工事をしたり、発注の見返りとして金銭の授受を行ったりすることです。

そこで、私は新築工事には「一級建築士」を雇うことをお勧めします。一級建築士の仕事は、設計をすることが大切な仕事の一つですが、もう一つは、その設計通りに監理(かんり)をしているかということが重要な仕事だからです。

たとえば野球に例えると監督とコーチがしっかりと選手を導いているかどうかということです。

この監理が行われないということは、

  • 設計図通りに工事をしない
  • 建築偽装が行われる(梁や柱を抜いても立証できない)
  • 設計時に選定された材料よりも安いもので仕上げる

などの可能性があり、これらはオーナーにとって大きなリスクとなります。

ですから、たとえアパート業者から設計施工が同時に行える会社を紹介されて「安い」と言われても、自分が信頼できる一級建築士に工事の監理を依頼することをお勧めします。

⑤どんな契約書をチェックする?

工事の際に契約書はどうやってチェックすればよいのか?

その質問に対する回答として、「建設業法で定められた基準があるので、そこまで契約書を深く読まなくてもよい」です。その代わりに2つの書類を必ず確認して欲しいのです。

建築をする際の契約書には、一般的に2つの書類が添付されています。

一つは、①実施設計図です。

実施設計図とは?
基本設計に基づいて、施工業者に工事の内容や方法を指示するためにつくられる設計図書のことです。 材料の太さから質まで、厳密に書き込まれており、実際の工事ではこの図面をもとに施工します。
<設計の流れ>
設計契約 → 基本設計(デザイン起こし) → 内訳詳細の変更 → 実施設計図

もう一つは、②実施見積書です。

実施見積書とは?
概算見積書に基づいて、内訳明細書付きの実施見積書をつくります。
<見積の流れ>
想定見積完成 → 3社以上工事相見積もり → 1社工事会社選定 → 実施設計図完成 → 実施設計に基づいて見積 → 実施見積書

この2つが工事請負契約書に添付されていないとどんなことが起こるのかといいますと、

  • 追加工事が発生する(元々何に対する追加なのかを立証できない)
  • 建物が建った後で図面を作成する(見積当初よりも安く仕上げる)

などのリスクがあります。

ですから、建築をする際は、工事請負契約書と共に実施設計図と実施見積書をしっかり確認しましょう。

⑥工程表を出さない

工程表とは、工事がいつまでに、何を行うのかを表したスケジュールです。

建築工事前に工程表を出さない工事会社には注意してください。

一般的に、建築工事は万が一のことを考えて期間を長めに設定します。とはいえ、不慮のトラブルや、中途の設計変更などで工事が長引いてしまうことはよくあることです。

工事会社の中には、竣工が遅延した際の「遅延賠償」や「損害賠償」を恐れて、工程表を出さないこともあります。

ですから、必ず建築工事前に工程表を必ず入手しましょう。

⑦構造計算書がない

構造計算書は、実施設計をする際に一緒に作ります。

構造計算とは?
構造計算では、建築構造物が積載のほか、地震・台風・積雪などの天災に際して荷重に耐えるのに必要な鉄筋・鉄骨の量などが満たされているかを基準に従って計算します。建物の柱の太さや、梁の量、土台の強さなどによって数値が変わるため、工事を行うなかで梁が数センチでもずれていたり、柱の位置が変わっている場合は再計算をする必要があります。

近年では耐震偽装の問題が取りだたされています。

実際に地震が起きた際に倒壊する恐れのあるアパートやマンションについては、社会の目も厳しくなっていますが、そもそも建築偽装を行う工事会社がいるのです。

つまり、実際の建物が、設計図とは違う位置に柱や梁があることです。

ですから、構造計算上は問題なくとも、基礎の柱や耐力壁などの位置が違っていれば、もう一度、構造計算をし直さなければなりません。

ちなみに、行政より建築確認申請が受理されたり、建築の確認済証があったとしても、役所は書類のチェック程度しかしないので、建築会社が誤魔化すことができてしまうのです。

実際に、建築の実施設計図と竣工時で、基礎の柱や壁の位置が違っている場合は注意してください。そのためにも、一級建築士による監理を徹底してください。

⑧工事会社(営業マン)の返事が遅い

営業マンの返事が遅い!

もちろん、大きなお金が動く契約を前にオーナーとしても気が短くなり、必要以上に営業マンに質問したくなることもあるでしょう。

オーナーと営業マンの相性・信頼係数は一番大切なポイントです。

実は連絡に気付いているのにメールを返信しない、連絡しても3日以上連絡がない、といった不信感がその後のトラブルに繋がることが多いのです。

相性が合わない・信頼できないならば担当者を変えるか、工事会社を変えましょう。なぜならば、どんなに工事会社がよくても「誤解」があっては物事が進まないからです。厳しいことをいえば、私たちオーナーも勉強不足の状態なので、焦らず時間をおいてもう一度考え直す機会となります。

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